「ChatGPTが望む形で回答をしてくれない」
そのような悩みの解決策となるかもしれない手段がプロンプトです。この記事ではChatGPTのプロンプトの意味や種類、代表的なシステム、活用のポイントや例をご紹介します。
ChatGPTのプロンプトとは
ChatGPTのプロンプトとは「○○をして」「○○とは何?」のようなChatGPTに対して送信する文章を指します。ここではその特徴と種類を見ていきましょう。
プロンプトとは
元々、プロンプト(Prompt)はIT分野では古くからある用語で、本来は「コンピューターが利用者に対して処理や入力を促す文字列」を指します。Windowsのコマンドプロンプトに表示される「>」の記号が有名です。
一方、 AI領域でのプロンプトとは「利用者がAIに対して処理や入力の命令を出す文章」のことです。簡単に言えば、私たちがChatGPTのチャット欄に入力するテキストを意味します。
実は、ChatGPTの回答の質はプロンプトのクオリティに依存しています。ChatGPTは莫大なテキストデータで構成されたAIです。その中には数え切れないほどの情報が埋まっており、プロンプトは「あなた(ChatGPT)が持っている情報の中から、これを引き出して回答して」と伝えてあげる役割を持ちます。
プロンプトの種類
ChatGPTのプロンプトはその方向性から以下の3種類に大別できます。
【ChatGPTのプロンプトの種類】
名称 | 特徴 |
---|---|
Instruction (命令) | 「してほしいこと」を具体的に命令するプロンプト (例:○○とは何か教えて。○○を要約して。) |
Completion (補完) | 後に続くテキストを補完させるプロンプト (例:「足利」とだけ入力すると「足利(あしかが)は、日本の歴史において重要な役割を果たした家系~」などと説明がはじまる) |
Demonstration (実演) | 希望する回答や推測の形を実演して真似をさせるプロンプト (例:「嬉しい=プラス、悲しい=マイナス、楽しい=プラス、寂しい=」と送信すると「マイナス」と返答する) |
3種類の使い分けを意識することで、自分のイメージに近い形でChatGPTを動かしやすくなります。
ChatGPTのプロンプトを活用するコツやポイント
続いて、ChatGPTのプロンプトを有効に活用するための5つのコツ&ポイントをご紹介します。
具体的かつ明確に伝える
ChatGPTのプロンプトは具体的かつ明確な内容にすることが大切です。
例えば、ある商品のPR文を複数出力させたい場合「良い感じに勧められる文章をいくつかください」といった曖昧な指示では欲しい回答は得られません。
「ECサイトに掲載するための商品のPR文を5つ考えてください」といったように、具体的かつ丁寧に伝えると期待する回答を得やすくなります。
参考情報を与える
OpenAI社が提供するガイド「GPT best practices」によれば、ChatGPTは参考情報を与えることで嘘の少ない回答を生成しやすくなります。
前述の商品PR文であれば、参考にして良いソースとして商品の詳細情報や仕様をプロンプトに含めましょう。過去に人の手で作成した商品PR文がある場合は、同じく参考情報として与えるとより効果的です。
条件を指定する
ChatGPTは多様な指示に対応しており、希望の条件をプロンプトに含むことでそれに適した回答を生成してくれます。「文字数は200文字前後で」「重要なポイントを3つ紹介する形で」「最初に結論を書いてください」といった条件も自由に設定可能です。
「ターゲットは主婦層(30~40代)」などとペルソナを条件としてプロンプトに加えることもできます。
表現方法・出力形式を指定する
ChatGPTは回答で使用する表現方法や出力形式も指定できます。「文体はですます調で」「1対1のインタビュー風に」「必ず一つ以上の箇条書きあるいは表を含んで」のように、希望する方向性を詳細に伝えると質の高い返答を得やすくなります。
また、複雑な内容を簡単に解説させる際には「小学生でも理解できる表現で」のような一文をプロンプトに含む形が人気です。
追加で質問を行う
ChatGPTは文字数に上限はありますが、それまでの会話内容を把握しています。そのため、最初の会話で期待した回答が得られなかった場合には、そのまま追加の質問や指示を行うことでより精度の高い返答を受け取れます。
回答が汎用的で面白くなかったのであれば「よりマニアックなアイデアを」、解説が薄かったのであれば「各見出しを深掘りして」などと方向性を伝えましょう。
ChatGPTの代表的なプロンプトシステム
具体的にどのようなプロンプトを作るべきか迷ってしまう方も多いでしょう。ここでは少しアレンジするだけで便利に役立つ、ChatGPTの代表的なプロンプトシステム3種類をご紹介します。
深津式プロンプト
深津式プロンプトとは、株式会社THE GUILDのCEOである深津貴之氏が考案したシステムです。
以下を基本形に、ChatGPTの立場や制約条件をその都度変更して使用します。
【深津式プロンプト】 # 命令書:あなたは、プロの編集者です。以下の制約条件と入力文をもとに、最高の要約を出力してください。 # 制約条件: ・文字数は300文字程度。 ・小学生にもわかりやすく。 ・重要なキーワードを取り残さない。 ・文章を簡潔に。 # 入力文:<ここに入力文章> # 出力文: |
深津式プロンプトの特徴は「冒頭でChatGPTの役割を指定していること」と「#や箇条書きを用いて条件などを明確に伝えていること」にあります。
一語一句をそのまま流用する必要はなく、書き方の方向性を真似るだけでもChatGPTから優れた返答を引き出しやすくなります。
ReActプロンプト
ReActプロンプトとはChatGPTに「初期の推論→必要な行動の考察→最終的な見解」と3段階を踏ませて質の高い返答を求めるシステムです。
名前のReActとは「Reasoning+Act」を意味しており、以下のような形式で使用します。
【ReActプロンプト】・ここに質問したい内容(例:優れたマーケターになる方法を教えてください)・Thought:・Action:・Observation: |
上記のプロンプトを送信すると、ChatGPTはThought→Action→Observationと順番に生成します。結果、最後のObservationは初期のThoughtからActionを踏まえた回答に進化しており、より鋭い意見を提供してくれる仕組みです。
ゴールシークプロンプト
ゴールシークプロンプトとは、自分の目的に必要なプロンプトをChatGPT自身に作成してもらえるシステムです。具体的には、最初に以下の指示をChatGPTに送ります。
【ゴールシークプロンプトの例】あなたに私のプロンプトエンジニアになってほしいと思っています。あなたのゴールは、私の目的を達成できる最高のプロンプトを考えることです。完成したプロンプトはChatGPTで使われます。以下の手順に従ってください。STEP1:最初に何のプロンプトを希望するのか私に質問してください。私が回答した後、次のSTEP2とSTEP3を何度も繰り返して改善しましょう。STEP2:私の入力を元に、以下の2つのセクションを作成してください。・a:改善されたプロンプト(あなたが書き直したプロンプトを、簡潔に、明確に、簡単に理解できる形で記載してください)・b:質問(現在のプロンプトを改善するために必要な情報を私に質問してください)STEP3:この反復プロセスは、私が追加情報を与え、あなたがa:改善されたプロンプトセクションをアップデートし、私が完了したというまで続けます。 |
すると、ChatGPTから今回作成するプロンプトの目的を質問されます。回答すると仮のプロンプトが提示され、同時に追加質問が行われます。それに回答すると、また改善されたプロンプトが提示されてさらなる質問が…とサイクルを繰り返し、質の高いプロンプトが完成する仕組みです。
ChatGPTのプロンプトの活用例
では、実際にChatGPTのプロンプトをどのように扱うべきなのか、活用例を見ていきましょう。ここでは、シーン別のプロンプト例と生成結果(GPT-4)をご紹介します。
記事の作成
2023年8月現在、ChatGPTが生成する記事はまだまだ品質や信頼性に問題があります。人の手による確認と改善は必須ですが、短文であれば以下のようなプロンプトで記事のたたき台を作ることはできます。
<プロンプト>あなたは20年以上のキャリアを持つプロのマーケターです。以下の条件に基づいて、テーマ「既存顧客との関係維持」に関する短編コラムを執筆してください。【条件】・文字数は300文字前後・見出し数は2つ・マーケティング分野からの視点・ビジネス向けの文章<生成結果>既存顧客の価値再認識ビジネスの舞台で、新規顧客獲得の魅力に追われることが多いですが、既存顧客の真の価値を忘れてはいけません。彼らはすでにあなたのブランドやサービスの価値を知り、信頼しています。維持のコツとROIの向上定期的なコミュニケーション: 顧客のニーズや期待は時代とともに変わります。定期的なフィードバックやコンタクトはその変化をキャッチし、サービスを適応させるための鍵です。独自の価値提供: 既存顧客に特別なオファーやサービスを提供することで、他の競合からの乗り換えを防ぎます。最終的に、既存顧客の維持はコスト効率が良く、高いROIをもたらす可能性があります。彼らとの関係を深化させ、長期的なビジネスパートナーシップを築きましょう。 |
文章の要約
文章の要約はChatGPTが得意とする作業の一つです。新たに文章を生み出すのではなく、既にある内容から要約するため、まったくの嘘や偽りが含まれにくい傾向にあります。
上記で生成したコラムを要約させてみましょう。
<プロンプト>あなたは20年以上のキャリアを持つプロの編集者です。以下の条件と情報に基づいて、文章を要約してください。【条件】・150文字以内で要約する・重要なポイントはすべて含む【要約する文章】「(上記のコラム全文)」<生成結果>ビジネスでは新規顧客獲得の魅力に目が行きがちだが、既存顧客の価値を見過ごしてはならない。彼らは既にブランドを信頼。定期的なコミュニケーションでニーズの変化を掴み、特別なオファーやサービスで競合からの移行を阻止すべき。既存顧客の維持はコスト効率が高く、ROIの向上が期待できる。 |
文章の校正・添削
ChatGPTは文章の校正・添削にも利用できます。記事の生成と同様に人の手による確認は必須ですが、初期チェックとして役立てることが可能です。
上記の要約したコラムを校正・添削させてみましょう。
<プロンプト>あなたは20年以上のキャリアを持つプロの校正者です。以下の文章の誤りと、改善点できる点を指摘してください。【校正する文章】「(上記で要約したコラム)」<生成結果>【校正結果】「ビジネスでは新規顧客獲得の魅力に目が行きがちですが、既存顧客の価値を見過ごしてはならません。彼らは既にブランドを信頼しています。定期的なコミュニケーションでニーズの変化を掴むことが重要であり、特別なオファーやサービスを提供して競合からの移行を阻止すべきです。既存顧客の維持はコスト効率が高く、ROIの向上が期待できます。」【指摘点】文章の終わりに「です」「ます」調の終止形を使用することで、より一貫性のある表現になります。「彼らは既にブランドを信頼」の部分は、完全な文として成り立たせるため「しています」を追加しました。「定期的なコミュニケーションでニーズの変化を掴み」の部分を「変化を掴むことが重要であり」と変更し、文章の意味を明確にしました。「特別なオファーやサービスで競合からの移行を阻止すべき」の部分に「を提供して」を追加し、文の流れをスムーズにしました。 |
「見過ごしてはならない」を「見過ごしてはならません」と修正してしまうなど誤りはあります。しかし、一方で納得の行く指摘もあり、十分な活用可能性を秘めているといえそうです。
バグの発見
そのほか、ChatGPTはプログラムコードのバグの発見にも使用できます。ここでは、プログラミング初心者の最初の課題としてお馴染みの「Hello World※」のコードを、あえて間違えた状態で与えてみましょう。
(※画面に「Hello World」と表示するだけのコード。今回はプログラミング言語にPythonを使用しており、正解は「print(‘Hello World’)」)
<プロンプト>あなたは20年以上のキャリアを持つプログラマーです。以下の条件を参考に、プログラムに含まれているバグを指摘してください。【条件】・言語はPython・冗長な部分があれば指摘する・修正は理由を明記する・最後に正しいプログラムも出力する【指摘するプログラム】print(”Hello World’)<生成結果>【バグの指摘と修正】シングルクォーテーションの使用:問題: print(”Hello World’)ではシングルクォーテーションが冗長に使用されています。修正理由: 文字列をシングルクォーテーションで囲む場合、開始と終了のシングルクォーテーションのみが必要です。【正しいプログラム】print(‘Hello World’)この修正により、”Hello World”が正しく出力されるようになります。 |
余分なシングルクォーテーションを加えた状態で確認させたところ、見事に修正を成功させています。
ChatGPTのプロンプトはどんな業務で活用できるか
ここまでにご紹介した通り、ChatGPTはプロンプト次第で様々な作業を担えます。「文章が関係するあらゆる業務への活用可能性を秘めている」といっても過言ではないかもしれません。
以下は、ビジネスにおいてChatGPTを活用しやすい業務のほんの一例です。
【ChatGPTを活用しやすい業務の一例】
- マニュアル作成
- 文章の作成や要約
- 翻訳
- 議事録・レポートの作成
- リサーチやデータの収集
- アイデア出し
ChatGPTをビジネスで活用する際の注意点や重要ポイントは、以下の記事もあわせてご確認ください。
>ChatGPTをビジネスで活用するために知っておくべきこととは-活用メリットや注意点
まとめ
この記事ではChatGPTのプロンプトについて、その意味や種類、活用のコツ、代表的なシステム、具体的な活用例をご紹介しました。
プロンプトとはChatGPTに与える質問や指示の文章を指し、その質は生成される回答のクオリティを大きく左右します。ご紹介したポイントと例を参考に、ぜひ自社に適したプロンプトを追求してみてください。
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